素材が決まっても、その生地をどう手配するかで、コスト・ミニマム・納期の条件はまったく変わります。
同じ生地でも手配ルートが違えば、必要な最低発注数量も、手元に届くまでのリードタイムも異なります。この記事では、まず生地ができるまでの基本構造を押さえた上で、アパレル生産における生地の手配方法を3つのルートに整理し、それぞれの特徴と選び方を解説します。
生地ができるまで — 糸から編立(織立)の流れ
3つのルートを理解するために、まず生地がどのように作られるかの基本構造を押さえておく必要があります。
生地は、大きく以下の工程を経て完成します。
糸の調達 → 編立(織立) → キバタ(生機) → 染色・仕上げ加工 → 完成生地
糸の段階では、原料(ポリエステル、ナイロン、綿等)の選定に加えて、糸の太さ(番手・デニール)、撚りの強さ、フィラメント糸かスパン糸か、機能糸を使うかどうかといった設計が行われます。機能性を糸の段階で持たせる場合(吸汗速乾、導電性、接触冷感等)は、この段階での糸の指定が必要になります。
編立(ニット生地の場合)または織立(布帛生地の場合)は、選定した糸を使って生地の組織を作る工程です。編み方・織り方の組織設計によって、ストレッチ性、通気性、密度、風合いが決まります。天竺、フライス、裏毛、鹿の子といったニット組織や、平織り、綾織り、サテンといった織物組織は、この工程で設計されます。
編立・織立が完了した状態の生地が「キバタ(生機)」です。まだ染色されておらず、仕上げ加工も施されていない状態です。
この構造を踏まえると、3つの手配ルートは「どの工程から自分で設計するか」の違いとして理解できます。
ルート①:糸の選定・編立(織立)からキバタを生産する
糸の選定から始めて、編立(織立)を経てキバタを作り、さらに染色・仕上げ加工を行って完成生地にするルートです。すべての工程を自分の仕様で設計できるため、自由度は3つのルートの中で最も高くなります。
完全にオリジナルの生地を作りたい場合、特定の機能糸を使いたい場合、市場にない組織や密度の生地が必要な場合は、このルートが前提になります。
ただし、上流から設計する分、各工程にそれぞれミニマムが発生します。
糸のミニマム: 糸の調達にも最低発注数量があります。特に機能糸やブランド糸は、糸メーカーごとに設定されたミニマムをクリアする必要があります。汎用的な糸であればミニマムは比較的小さく抑えられますが、特殊な糸ほど条件は厳しくなります。
編立・織立のミニマム: 編み工場・織り工場にもミニマムがあります。特に織物の場合、経糸(たていと)のセッティングに手間がかかるため、少量の生産は受けにくい傾向があります。ニット(編み)は織物と比較すると小回りが利きやすいですが、それでも一定の数量は必要です。
染色加工のミニマム: キバタが完成した後の染色・仕上げ加工にも、加工場ごとのミニマムがあります。
このように、糸→編立(織立)→染色加工と、3段階のミニマムを同時にクリアする必要があるため、トータルのリードタイムも最も長くなります。計画的な発注スケジュールが組めるお客様に適したルートです。
ルート②:既存のキバタを活用して染色加工する
すでに市場に流通している、もしくは生地メーカーが在庫しているキバタを使用し、そこから染色・加工を行うルートです。
キバタ自体を一から作る必要がないため、ルート①と比較してミニマムとリードタイムの両方を圧縮できます。使用したい糸や組織に合致するキバタが存在すれば、非常に効率的なルートです。
ポイントは、合致するキバタが存在するかどうかの確認です。キバタの在庫状況は変動するため、タイミングによっては手配できないこともあります。また、染色加工の工程には加工場ごとのミニマムがあります。
このルートの活用には、どのメーカーにどんなキバタがあるかを把握しているネットワークが必要です。
ルート③:既成生地から選定する
すでに染色・加工まで完了した状態の生地から選定するルートです。必要な分だけの手配が可能で、ミニマムのハードルが最も低いルートです。
ただし制約もあります。色はその生地に用意されている色展開から選ぶことになり、完全なオリジナルカラーでの対応はできません。単価もキバタから作る場合と比較するとやや上がります。
さらに注意すべきは、人気のある既成生地は在庫が流動的だということです。必要なタイミングで必要な数量が確保できるかどうかは都度確認が必要で、特にシーズン前は在庫の動きが激しくなります。
「既成生地だから簡単」と思われがちですが、在庫の変動リスクを見越した提案ができるかどうかが、実は重要なポイントです。
販売時期から逆算する
3つのルートの選択は、最終的には販売予定時期からの逆算で決まります。
販売時期に十分な余裕がある場合は、キバタから作るルートが取れるため、自由度が最も高い状態で素材を設計できます。販売時期が迫っている場合は、既成生地の活用が現実的な選択肢になりますが、色や在庫の制約を受け入れる必要があります。
この「逆算」の精度を上げるためには、販売時期を早い段階でお伝えいただくことが最も効果的です。素材の選定と生産スケジュールは切り離せないものであり、早い段階でご相談いただくほど、提案できる選択肢は広がります。
まとめ
生地の手配は「何を使うか」だけでなく「どう手配するか」まで含めて設計するものです。ルートごとに自由度・ミニマム・コスト・納期の条件が異なるため、お客様のロット・予算・販売時期に合わせた最適なルートを選ぶことが重要です。スタイルワークスでは、この手配設計を素材提案の基本としています。
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