サステナブル素材の選び方 — 調達担当者が知っておくべき基礎と現実

「サステナブル素材を使ったアイテムを企画したい」というご相談は、近年明らかに増えています。一方で、サステナブル素材という言葉が指す範囲は広く、リサイクルポリエステル・オーガニックコットン・テンセル・植物由来ナイロンなど、性質も訴求軸も異なる素材が同じカテゴリで語られているのが現状です。

「環境に良さそうだから」という出発点でサステナブル素材を選んでしまうと、ブランドが本来訴求したかったメッセージとのズレが生じたり、量産段階で物性や調達の課題に直面したりすることがあります。本記事では、サステナブル素材を選定する際に押さえておきたい基礎知識と、実務上の判断軸を整理します。

「サステナブル素材」とは何を指すのか

サステナブル素材という言葉に厳密な定義はありません。一般的には、製造・廃棄プロセスにおいて環境負荷を抑える、資源循環に寄与する、あるいは社会的配慮を伴う形で生産された素材の総称として使われています。

ただし、この「環境負荷の抑え方」には複数のアプローチがあります。リサイクル原料を使うアプローチ、有機栽培の天然繊維を使うアプローチ、植物由来の原料から合成繊維を作るアプローチ、生分解性を持たせるアプローチなど、それぞれの素材が異なる方向性で「持続可能性」に貢献しています。

このため、「サステナブル素材を使う」というブランド方針を定める前に、何を優先したいのか——資源循環なのか、化学物質の削減なのか、社会的配慮なのか——を整理しておくことが、その後の素材選定をスムーズにします。

主要なサステナブル素材のカテゴリ

リサイクル素材

すでに一度使用された原料を再利用して製造される素材です。アパレル領域で最も普及しているのは再生ポリエステル(rPET)で、ペットボトルや使用済み繊維製品を原料としています。再生ナイロン・再生ウール・再生コットンなども流通量が増えており、特にアウトドア・スポーツウェア領域での採用が顕著です。

リサイクル素材の強みは、新規資源の採掘・精製を伴わない点にあります。一方で、リサイクル工程を経ることで品質のばらつきが生じやすく、特に再生コットンや再生ナイロンでは強度や色再現性において新品素材との違いが出やすい傾向があります。物性面での確認が発注前に必要です。

オーガニック天然繊維

化学合成農薬・化学肥料を使用せずに栽培された天然繊維です。代表格はオーガニックコットンで、オーガニックウール・オーガニックリネンなども一部流通しています。

「オーガニック」を訴求するためには、栽培から加工までの一貫した管理が求められます。GOTS認証など第三者機関の認証を取得した素材であれば、栽培・紡績・染色・縫製の各工程における基準への適合が担保されています。一方で、認証取得素材は通常素材と比較して価格が高くなるため、コスト設計への影響は事前に把握しておく必要があります。

再生セルロース系・植物由来素材

木材パルプなどの植物由来原料を化学的に処理して作られる繊維群です。テンセル(リヨセル)・モダール・キュプラ・ビスコースレーヨンなどが該当します。

近年特に注目されているのは、製造工程で使用する溶剤の循環利用や、責任ある森林管理に基づく原料調達など、製造プロセス全体の環境配慮を組み込んだ素材です。テンセルブランドの「リヨセル」「モダール」がその代表例で、シルクのような風合いと天然由来素材としての訴求性を兼ね備えています。

バイオベース合成繊維

植物由来の原料から作られた合成繊維です。ヒマシ油由来のバイオナイロン、トウモロコシやサトウキビ由来のバイオポリエステルなどが含まれます。

「合成繊維でありながら石油由来ではない」という訴求ができる点が特徴です。ただし、生分解性を持つわけではなく、廃棄段階での環境負荷については従来の合成繊維と大きく変わらないケースもあります。素材の特性を正確に理解した上で訴求することが求められます。

選定時に押さえるべき4つの観点

訴求軸との整合性

ブランドが消費者に伝えたいメッセージが、選定する素材の特性と一致しているかを確認します。「資源循環」を訴求したいのであればリサイクル素材、「肌への優しさと有機農業の支援」を訴求したいのであればオーガニックコットン、というように、ブランドの方針と素材のストーリーが噛み合っていることが重要です。

私たちが素材選定のご相談を受ける際には、まずこの「訴求軸との整合性」を最初に確認するようにしています。素材スペックよりも前に、ブランドが伝えたいメッセージの輪郭を共有することが、その後の選定を効率化します。

物性・加工適性

サステナブル素材は、従来素材と比較して物性に違いがあるケースがあります。リサイクル素材では強度や色のばらつき、オーガニックコットンでは縮率や毛羽立ち、テンセルでは濡れた状態でのデリケートさなど、それぞれに固有の特性があります。

製品としての用途——スポーツウェアなのか、ベーシックアイテムなのか、ファッション性の高いアウターなのか——に応じて、必要な物性を満たせるかを事前に確認することが量産時のトラブル回避につながります。

調達の安定性

サステナブル素材は通常素材と比較して、流通量・在庫量・継続調達の安定性において制約があるケースがあります。特に小ロット発注の場合、希望する色・規格のロットが揃わないという状況も発生します。

工場との関係構築を長期的に積み重ねてきたことが、対応スピードと品質管理の精度を支えていますが、調達ルートの開拓と素材在庫の確認は発注前の重要な工程です。「使いたい素材があるが、希望数量・希望納期での確保が可能か」を企画段階で確認することをおすすめします。

コスト構造

サステナブル素材は通常素材と比較して、原料コスト・認証費用・加工コストのいずれか、あるいは複数の要因で価格が高くなる傾向があります。最終製品の価格設定を考える際には、素材コストの上昇分を販売価格でどう吸収するか、あるいはブランド価値として転嫁するかの設計が必要になります。

「サステナブル素材を使えば売れる」という単純な構図ではなく、価格と価値のバランスを設計することがブランド戦略の核心です。

認証と表示の関係を切り離して考える

サステナブル素材を使用する際、「素材として使うこと」と「ブランドとして認証表示を訴求すること」は切り離して考える必要があります。

認証取得済みの素材を使用していても、ブランド側で適切な手続きを経なければ、最終製品に認証ロゴを表示することはできません。逆に「サステナブル素材を使っている」という事実だけを訴求するのであれば、必ずしも認証取得が必要なわけではありません。

ただし、認証なしに「オーガニック」「リサイクル」といった具体的な訴求語を使うことには法的・倫理的なリスクが伴います。グリーンウォッシング(環境配慮を装う表示)への批判は近年強まっており、根拠の薄い訴求は逆にブランドへのダメージとなります。表示と認証の関係については、認証ごとのルールを把握した上で慎重に設計することが求められます。

認証の詳細については関連記事「素材の認証表示を読む — GRS・OEKO-TEX・GOTSとは何か」もあわせてご参照ください。

発注設計に落とし込む際の進め方

サステナブル素材を採用したアイテムの発注を進める際、私たちのアプローチでは以下の順序で整理することが多くあります。

最初に、ブランドが訴求したいメッセージと、それに対応する素材カテゴリを擦り合わせます。次に、その素材カテゴリの中から、製品用途・物性要件に合うものを絞り込みます。続いて、調達ルートと価格・納期を確認し、最後に量産時の検査基準と表示ルールを整理する、という流れです。

こうしたご相談を受けることが多いのは、サステナブル素材を「とりあえず使ってみたい」段階のブランドからです。その場合は、最終的な販売価格・想定生産数量・販売チャネルといった事業設計の部分から伺いながら、無理のない範囲で素材を組み込んでいくことが現実的なスタートになります。

サステナブルへの取り組みは、最初から完璧を目指すのではなく、できる範囲から段階的に取り入れていくアプローチが結果的に長続きします。

まとめ

サステナブル素材の選定は、「環境に良いから」という抽象的な動機だけでは進められない領域です。ブランドの訴求軸・製品の物性要件・調達の安定性・コスト構造という4つの観点を踏まえ、認証と表示の関係も整理した上で、発注設計に落とし込んでいくことが必要です。

サステナブル素材は今後さらに種類と流通量が増えていく分野です。素材の選択肢が広がる中で、自社ブランドにとって本当に意味のある選択をするためには、製造の現場で素材を扱ってきた知見を持つOEMパートナーとの早い段階での対話が役立ちます。

スタイルワークスでは、サステナブル素材を含む幅広い素材選定のご相談を受け付けています。企画段階からのご相談をお待ちしています。

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