素材の認証表示を読む — GRS・OEKO-TEX・GOTSとは何か

アパレルの素材仕様書や生地スペックシートを確認していると、GRS・OEKO-TEX・GOTSといった認証表示を目にする機会が増えています。バイヤーやエンドユーザーからの問い合わせに答えるために急いで調べた、という経験をお持ちの方もいるのではないでしょうか。

これらの認証は、それぞれ異なる目的と対象範囲を持っています。どれも「環境や安全に配慮したテキスタイル」に関わるものですが、同一視して扱うと発注仕様の設計段階で齟齬が生じることがあります。本記事では、主要3認証の内容と違い、そしてOEM発注における実務上の扱い方を整理します。

認証表示が増えた背景

2010年代後半から、アパレル産業に対するサステナビリティへの要求は急速に高まりました。欧米の大手リテーラーがサプライヤー選定基準に環境・社会的配慮を明示するようになったことで、日本のアパレルブランドもその波を受けるようになっています。

背景にあるのは消費者意識の変化だけではありません。EUでは繊維製品に関するデューデリジェンス規制の整備が進んでおり、素材の出所・製造工程・化学物質管理を証明できる根拠としての「認証」の重要性が高まっています。認証は単なるマーケティング上のラベルではなく、調達の透明性を担保するための仕組みとして機能しはじめているのです。

こうしたご相談を受けることが多くなった背景には、大手セレクトショップやSPA企業との取引条件に認証取得素材の使用が含まれるようになってきた、という現場の実態があります。

主要3認証の概要

GRS(Global Recycled Standard)

GRSは、リサイクル原料の含有率と、それに伴うサプライチェーン全体の追跡可能性を認証する規格です。運営主体はTextilesExchange(テキスタイルエクスチェンジ)で、ポリエステル・ナイロン・コットン・ダウン・ウールなど幅広い素材に適用されます。

認証の核心は「リサイクル原料の含有割合の証明」にあります。製品全体に占めるリサイクル素材の比率が20%以上であればGRS認証の申請対象となり、50%以上の場合に製品ラベルへのGRSロゴ使用が認められます。原料の出所(プレコンシューマー廃材なのか、ポストコンシューマー廃材なのか)についても区分が設けられています。

再生ポリエステル(rPET)を使ったスポーツウェアやアウターで最も頻繁に見かける認証であり、ブランドがリサイクル素材使用を訴求したい場合の根拠として機能します。

OEKO-TEX STANDARD 100

OEKO-TEX STANDARD 100は、素材・製品に含まれる有害化学物質の残留量が一定基準値以下であることを証明する認証です。国際的な検査機関であるOEKO-TEX協会が運営しており、染料・仕上げ剤・重金属・農薬残留物など100項目以上の物質を対象に検査を行います。

最大の特徴は、製品カテゴリを4クラスに分類している点です。最も厳しいクラスIは乳幼児向け製品が対象となり、クラスが上がるにつれて基準がやや緩和されます。ただし「緩和」といっても国際的な安全基準を満たしていることが前提であり、一般的なアパレル(クラスII・III)においても十分に高い水準です。

この認証は「出所」ではなく「安全性」を証明するものです。オーガニックコットンでなくても、リサイクル素材でなくても取得できる点が他の認証と大きく異なります。原料の種類を問わず、仕上がった素材・製品が化学的に安全であることを示したい場合に有効です。

GOTS(Global Organic Textile Standard)

GOTSは、オーガニック天然繊維を原料とし、その収穫から最終製品になるまでの全工程における環境・社会的基準を認証するスタンダードです。Global Organic Textile Standard(GOTS)協会が運営しています。

認証の対象となる原料はオーガニックコットン・オーガニックウール・オーガニックリネンなど天然繊維に限られます。合成繊維はGOTS認証の対象外です。また「オーガニック原料を使っていれば良い」というわけでなく、紡績・染色・縫製といった加工工程においても禁止化学物質の管理や排水処理基準への適合が求められます。

さらにGOTSは社会的基準も含んでいます。労働環境・賃金・児童労働禁止などのILO基準への準拠が認証条件となっており、環境面と社会面を統合したスタンダードとして位置づけられています。

3つの認証、何が違うのか

3つの認証を整理すると、それぞれが「何を証明するか」という軸で明確に分かれています。

GRSは素材の出所(リサイクル原料であること)を証明します。OEKO-TEX STANDARD 100は製品・素材の化学的安全性を証明します。GOTSはオーガニック原料の使用と、製造工程全体の環境・社会的適合性を証明します。

この違いを理解しておくことは実務上重要です。たとえばGRS認証を取得した再生ポリエステル生地であっても、染色工程で使用された化学物質の残留量はGRSの評価対象ではありません。OEKO-TEX STANDARD 100を別途取得していなければ、化学的安全性については別途確認が必要になります。逆に、OEKO-TEX STANDARD 100を取得していても、その素材がリサイクル原料かどうかはOEKO-TEXでは証明されません。

複数の認証を組み合わせて使用するケースも増えており、「GRS+OEKO-TEX STANDARD 100取得の再生ポリエステル」という仕様で指定が入ることもあります。それぞれの認証が証明する範囲を把握した上で、ブランドとして何を訴求したいのかを整理してから素材選定に入ることが望ましいといえます。

OEM発注における認証素材の扱い方

認証はどこが取得するのか

認証取得の主体は、認証の種類と取得対象の工程によって異なります。

素材メーカー(テキスタイルメーカー・糸メーカー)が認証を取得している場合、その素材を購入する側(アパレルブランドや縫製工場)は必ずしも独自に認証を取得する必要はありません。ただし、製品全体にロゴを表示したい場合や、最終製品として認証を訴求したい場合は、サプライチェーン上のそれぞれの主体が認証を取得しているか、あるいは認証を取得した事業者からの仕入れであることを証明できる「トランザクション証明書(TC)」を取得する必要があります。

この仕組みを理解していないと、「GRS認証の生地を使っているのにGRS製品と表示できない」という状況が発生します。認証済みの素材を使用することと、ブランドとして認証表示を使用する権利を持つことは、別の話として整理しなければなりません。

トレーサビリティとサプライチェーンの連鎖

GRSやGOTSは、素材の出所から最終製品までのトレーサビリティを認証の根拠としています。つまり、サプライチェーン上のどこかで認証を取得していない事業者が介在すると、その先の認証表示が困難になる構造になっています。

私たちが素材の調達ルートを設計する際には、認証の連鎖が途切れていないかを確認することを重視しています。特にコスト優先で代替素材に切り替える場面では、認証の継続可否も合わせて検討する必要があります。工場との関係構築を長期的に積み重ねてきたことが、こうした素材トレーサビリティの確認においても対応スピードと精度を支えています。

認証表示を活用する際の注意点

認証を活用するにあたって、いくつか注意すべき点があります。

認証は更新が必要です。 いずれの認証も有効期限があり、定期的な審査と更新が必要です。供給先の素材メーカーや工場が最新の認証を維持しているかを定期的に確認することが求められます。

認証があれば訴求できるわけではありません。 認証を取得した素材を使用していても、最終製品のラベルやマーケティング表示に認証ロゴを使用するには、各認証機関のガイドラインに沿った表示ルールへの準拠が必要です。ロゴの使用許諾は認証機関との手続きを経て行われます。

コストへの影響を事前に把握してください。 認証素材は通常素材と比較して調達コストが高くなる傾向があります。また認証取得・維持のための費用が生産コストに転嫁される場合もあります。企画段階でコスト設計に認証素材の使用を組み込んでおくことが重要です。

「オーガニック」「リサイクル」の表示には根拠が必要です。 認証なしにこれらの訴求表現を使用することは、消費者庁のガイドラインや景品表示法上のリスクにつながる可能性があります。表示の根拠として認証を活用する意義はここにもあります。

まとめ

GRS・OEKO-TEX STANDARD 100・GOTSはそれぞれが証明する内容が異なります。リサイクル素材の出所証明、化学的安全性の証明、オーガニック原料と製造工程全体の適合性証明——この3軸を理解した上で、ブランドの訴求方針と合致する認証を選択することが出発点になります。

認証はブランドのサステナビリティ戦略を裏付ける実務的な根拠です。同時に、トレーサビリティの確保・表示ルールの遵守・コスト設計への反映といった複数の実務対応が伴います。「認証素材を使いたい」という意思決定の前に、何をどこまで証明したいのかを整理することが、発注仕様の設計をスムーズにする第一歩です。

スタイルワークスでは、認証素材の選定から発注仕様への落とし込みまで、企画段階からご相談を受け付けています。素材の認証に関するご質問や、具体的な生産計画のご相談はお気軽にお問い合わせください。

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