OEM発注で何かトラブルが起きたとき、「担当者のミスだった」「工場の確認不足だった」という結論で終わることがよくあります。しかし、同じようなトラブルが繰り返されるとしたら、それは個人のミスではなく、発注の構造そのものに原因があることがほとんどです。
この記事では、アパレルOEMの現場でよく起きるトラブルを類型別に整理し、それぞれがどのような構造から生まれるかを解説します。「次こそは防ぎたい」という方にとって、原因の構造を知ることが最初のステップになります。
トラブル1:色が違う(色差)
「サンプルと量産品の色が違う」は、OEMトラブルの中でもっとも頻繁に起きるものの一つです。
起きやすい構造的な背景
色差が生じる原因は複数あり、それぞれが別の工程に紐づいています。
まず、色の基準が「目視」で共有されている場合です。「このサンプルに合わせてください」という指示だけでは、光源の違い(蛍光灯・自然光・LED)や、染色ロットの差を吸収できません。染色は化学反応であり、同じ染料・同じ条件でも素材の繊維組成・製造ロット・水質・温度によって微妙なズレが生じます。
次に、承認サンプルと量産時の生地が「同一ロット」でない場合です。サンプル段階では少量の生地を使い、量産では別ロットの生地を大量に染色するというケースは珍しくありません。生地ロットが変わると、染料の吸収率が変わり、同じ染色指示でも色が安定しません。
さらに、ラボディップ(色見本の染色テスト)の承認プロセスが省略・簡略化されているケースも原因になります。「時間がないから」という理由でラボディップの往復確認を省くと、量産時に大きく外れるリスクが高まります。
防ぐための視点
色の基準は「サンプル現物」だけでなく、パントン(PANTONE)やDICなどの色番号で数値化して仕様書に記載することが基本です。加えて、ラボディップの承認ステップをスケジュールに織り込むことで、色差リスクを構造的に減らすことができます。
トラブル2:サイズが合わない(寸法ズレ)
「サンプルではOKだったのに、量産品を着てみたら小さい」「ウエストのサイズが全サイズ均等にズレている」というトラブルも頻繁に起きます。
起きやすい構造的な背景
もっとも多い原因は、洗い縮みの見込みが仕様書に反映されていないことです。ニット素材やコットン素材は洗濯後に一定量縮みます。この縮み率を素材ごとに検証し、縫製前の寸法に織り込んでおかなければ、洗濯後の製品サイズは必ずズレます。サンプル段階では洗濯テストをしていても、量産で使う生地ロットが異なれば縮み率も変わります。
次に、グレーディング(サイズ展開)のルールが不明確な場合です。SサイズのサンプルがOKでも、Lサイズへの展開比率が工場任せになっていると、大きいサイズになるほど寸法バランスが崩れることがあります。
また、縫い代の幅と縫い目の種類による仕上がり寸法の差も見落とされやすいポイントです。オーバーロックの縫い代幅が仕様書と異なるだけで、身頃の仕上がり幅は左右で数ミリずつ変わります。
防ぐための視点
仕様書には完成寸法だけでなく、素材ごとの洗い縮み率と、縫製前の裁断寸法を明記することが重要です。また、量産前に本番生地での洗濯テストを実施し、縮み率を改めて確認するプロセスをスケジュールに組み込むことをおすすめします。
トラブル3:納期が遅れる
「工場から納期遅延の連絡が来たのは出荷予定日の直前だった」というケースは、発注側にとって最もダメージが大きいトラブルのひとつです。
起きやすい構造的な背景
納期遅延の原因は工場側にあることも多いですが、構造的に「遅れが見えにくい仕組みになっている」ことが問題を深刻にします。
まず、工程の中間確認ポイントが設定されていない場合です。発注から納品まで一本のスケジュールしか引かれていないと、途中の遅れを早期に把握できません。生地入荷・裁断完了・縫製完了・検品完了といった中間マイルストーンを設定し、進捗を都度確認する仕組みがなければ、問題が表面化するのは必然的に出荷直前になります。
次に、生地・副資材の調達遅れが縫製スケジュールに波及するケースです。縫製工場は生地が揃わなければ裁断を始められません。生地の調達が1週間遅れると、その分がそのまま納期に影響します。生地手配のリードタイムは縫製リードタイムとは別に存在しており、両方を含めたトータルスケジュールを発注時に確認することが必要です。
また、工場の生産ラインが他の案件で埋まっているにもかかわらず、発注側がその状況を知らないまま納期を設定しているケースもあります。
防ぐための視点
発注時に「生地入荷予定日」「裁断開始予定日」「縫製完了予定日」「検品・出荷予定日」を工程ごとに確認し、中間報告のタイミングを合意しておくことが基本です。遅れが発生した場合でも、早期に情報共有できる関係性を築くことが、最終的な被害を最小化します。
私たちは発注確定後、工程別のマイルストーンを設定して工場と共有するスケジュール管理を標準の進め方としています。工場との直接交渉を中国語・英語で行うことで、進捗の確認や遅延の早期察知を、通訳を介さずに行える体制を整えています。
トラブル4:リピートで品質が変わる
「初回ロットの品質は良かったのに、2回目から仕上がりが落ちた」というトラブルは、継続発注が始まってから気づくパターンです。
起きやすい構造的な背景
このトラブルの根本原因は、初回の品質が「担当オペレーターの熟練度」に依存していた場合が多くあります。特定の腕のいい縫製工が担当した初回と、量産規模が拡大して別のオペレーターが加わった2回目以降では、ミシンの設定・縫い目のテンション・仕上げの丁寧さに差が出ます。
また、量産規模の違いによる生地ロットの切り替えも原因になります。小ロットの初回は1ロットの生地で完結したが、2回目は増量によって別ロットの生地を追加仕入れした結果、色・風合い・縮み率がわずかに変わる——というケースです。
さらに、初回サンプルの詳細な縫製仕様が記録・共有されていないことも構造的な問題です。「とりあえず良いものができた」という状態のまま次のロットに進むと、その「良いもの」を再現する根拠がありません。
防ぐための視点
初回の量産が完了した段階で、使用した生地ロット・縫製条件・検品基準を仕様書として記録することが重要です。デジタル制御ミシンを持つ工場であれば、縫製条件をデータとして保存し再現できる体制があるかを確認することも、工場選定の基準になります。
トラブル5:副資材が仕様と違う
「ボタンの色が微妙に違う」「ファスナーのスライダーが指定と異なる」という副資材のズレも、見落とされやすいトラブルです。
起きやすい構造的な背景
副資材のトラブルは、仕様書に副資材の品番・メーカー・色番号が明記されていないことで起きます。「黒のプラスチックボタン」という指示だけでは、工場が手配できる在庫の中から選ぶことになり、イメージと異なるものが使われても「仕様書通り」という判断になってしまいます。
また、指定した副資材が現地(中国・ベトナム等)で調達できない場合に、工場が代替品で対応してしまうケースもあります。代替品使用の前に確認を求める運用が取り決められていないと、発注側は出荷前まで気づけません。
防ぐための視点
ボタン・ファスナー・テープ・リブなどの主要副資材は、品番・メーカー・色番号を仕様書に明記し、承認サンプルとして現物を工場に渡すことが基本です。代替品が必要になった場合は必ず事前連絡・承認を得るというルールを、発注時に合意事項として設定しておくことをおすすめします。
トラブルは「ミス」ではなく「設計の問題」
ここまで挙げた5つのトラブルに共通しているのは、「誰かがうっかりした」という問題ではなく、情報の粒度・確認のタイミング・合意の明確さという設計の問題だということです。
仕様書が曖昧なまま発注が進む、中間確認がないまま納期になる、初回の品質が記録されないまま次に進む——こうした構造的な穴が、トラブルを繰り返す温床になっています。
発注の精度を上げることは、品質を上げることと同義です。「良いものを作りたい」という意図が、工場に正確に伝わる仕組みを整えることが、OEM発注における最大のリスクヘッジになります。
私たちスタイルワークスは、こうしたトラブルの構造を発注設計の段階から防ぐことを、生産管理の基本としています。仕様書の整備・工程ごとの中間確認・生地ロットの管理——一見地味に見えるこれらのプロセスの積み重ねが、「作ったら思っていたものと違った」という事態を防ぐことにつながります。ご相談いただく際には、こうした仕組みづくりからご一緒することも私たちの役割と考えています。
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