生地や糸の提案資料に「再生可能エネルギー100%」と書かれていたら、まず確かめたいのは、その説明がどの工場の、どの工程を対象にしているかです。紡績の電力についての取り組みを、染色や縫製、輸送まで含む商品の説明へ広げると、根拠の範囲が変わります。
シキボウは2026年9月7日、富山工場の紡績糸製造に使う電力を、非化石証書の活用によって実質再生可能エネルギー100%としたと発表しました。環境に配慮した素材を比較する際の、対象範囲の読み方を考える事例です。(シキボウの公式発表)
証書による環境価値と、電力の供給方法を区別する
同社が調達したのは、富山工場の敷地内にある太陽光発電設備に由来する環境価値を持つ、トラッキング付FIT非化石証書です。発表では、紡績糸製造に使用する電力量に相当する証書を活用すると説明しています。(証書と対象電力量の公式説明)
ここでの「実質」は、証書による環境価値を含めた説明です。工場が使う電力を常にすべて敷地内の太陽光発電だけで賄う、という説明に読み替えないようにします。
供給元の取り組みを比較するときは、発電設備、電力調達、証書の利用を分けて聞くと、何を根拠にした表示なのかが分かりやすくなります。
対象は、富山工場の紡績糸製造に使う電力
今回の発表は、富山工場における紡績糸製造の電力使用に伴う実質的なCO₂排出量、Scope 2の削減を扱っています。完成した衣服の全工程について、排出量ゼロを示す発表ではありません。(取り組みの対象範囲)
商品を企画する発注者は、提案された糸がどの工場・工程でつくられるか、発表の対象と自社が調達する品番が対応しているかを確認します。素材メーカーの企業全体の方針と、個別の調達品について説明できる内容も分けて整理したいところです。
商品紹介に使う前に、品番・期間・資料をそろえる
自社の商品紹介へ取り組みを記載する場合は、対象品番、適用期間、製造拠点、供給元から確認できる資料をそろえます。商品に使う糸の製造と、資料に記載された取り組みがどう結び付くかを確認してから、説明文を決めます。
たとえば、紡績の電力に関する情報を、染色・加工・縫製・輸送を含む商品全体の「CO₂ゼロ」という表現へ広げないことです。別の工程についても説明したい場合は、その工程の根拠を追加して確認します。
環境に関する取り組みの紹介と、特定商品の環境負荷を数値で比較することは、必要な資料が異なります。比較するなら、どの工程や期間を含み、何と比べた数値なのかを明確にする必要があります。
素材提案を受けるときの確認項目
- 対象範囲:工場、工程、電力・燃料などの区分と、説明の対象期間。
- 対象品番:提案された糸・生地が、発表された取り組みの対象に含まれるか。
- 確認資料:取り組みの根拠と、調達品との対応を供給元がどう説明できるか。
- 商品での表示:確認できた範囲を、商品説明や提案資料でどのように記載するか。
環境配慮素材の比較では、強い表現だけを並べるより、対象工程と根拠をそろえて見る方が判断しやすくなります。発注先から資料を受け取り、今回の商品について説明できる範囲を決めておきます。
出典・参考資料
- シキボウ:非化石証書の活用により、紡績糸の製造に使用する電力を実質再エネ100%に(2026年9月7日)
※2026年10月12日に確認した公開情報をもとに編集。発注時の確認項目は編集上の提案です。対象品番・適用期間・個別商品の排出量、当社の調達品への適用は本稿では確認していません。