夏向けの衣料素材を選ぶ際、「接触冷感」という言葉だけでは、着用中の湿気や汗への対応まで判断できません。クラレトレーディングが2026年9月29日に発表した調湿素材「ニンファス」の開発をきっかけに、生地を比較するときに分けて確認したい機能を整理します。
クラレが発表した調湿素材「ニンファス」
発表によると、ニンファスはポリエステルを芯、ナイロンを鞘に配置した特殊な断面構造を持つ複合繊維です。同社は吸放湿性、接触冷感性、速乾性を特徴として挙げ、スポーツウェア、アウトドア衣料、インナーウェアなどへの展開を示しています。
ここで紹介しているのはメーカーの発表内容です。使用する生地や衣服での性能を、当社が試験して確認したものではありません。繊維の特徴を、そのまま完成した衣服の快適性として受け取らず、採用を検討する生地ごとに確かめることが必要です。
接触冷感・吸放湿・速乾は、別の働き
接触冷感は、肌が生地に触れたときの熱の移動に関わる性質です。触れた瞬間にひんやり感じることと、着用中に蒸れにくいことは、分けて評価したい項目です。
吸放湿は、生地が空気中の水蒸気を取り込んだり、外へ放出したりする働きです。液体の汗を吸う「吸水」とは対象が異なります。比較には、温度・湿度や測定時間などの試験条件をそろえる必要があります。
速乾は、濡れた後の乾きやすさに関わります。接触冷感や吸放湿の結果だけでは、乾きやすさまでは判断できません。乾燥試験の方法や水分量、温湿度などを確認し、同じ条件で測った結果を比べることが出発点になります。
生地を選ぶ前に確認したいこと
まず、想定する着用場面を決めます。運動時、屋外での活動、日常のインナーなどでは、気にしたい不快感も異なります。そのうえで、候補となる生地の混率、厚み、組織、加工内容と、各機能の試験データを確認します。
試験結果には、測定方法、比較した生地、洗濯前後の変化が示されているかを確認したいところです。機能の数値に加え、試作時の風合い、透け感、伸び、縫製のしやすさも見ておくと、製品仕様との相性を判断しやすくなります。
調達面では、サンプルの入手可否、供給段階、最小発注数量、納期、価格を別途確認します。今回の発表だけでは、これらの条件や洗濯後の性能維持については判断できません。また、Style Worksでの採用・取り扱いが決まったことを示す記事ではありません。
新しい素材の発表は、選択肢を知る入口になります。素材名や機能表示だけで決めず、「どの着用場面に、どの性能が必要か」を整理し、試験データと試作結果を合わせて選ぶことが大切です。
出典・参考資料
- クラレ/クラレトレーディング:調湿素材「ニンファス」の開発発表(2026年9月29日)。出典URL:https://www.kuraray.com/jp-ja/news/2026/0929/
- 一般財団法人カケンテストセンター:吸放湿性試験の解説。吸放湿の意味と試験条件の説明を参照。
- 一般財団法人カケンテストセンター:冷感・蒸発冷却に関する試験の解説。接触冷感と蒸発冷却の区別を参照。