淡いブルーのロゴを綿のTシャツに入れる。ポリエステルのスポーツウェアにも同じデザインを展開する。そんな企画で確認したいのは、印刷できるかどうかに加え、色味、着心地、洗濯後の状態が商品として成立するかです。
国内外のメーカーが公表した最近の製品を見ると、色の表現範囲を広げる動き、素材に由来する課題への対応、印刷前後の工程をまとめる動きが見えてきます。2026年の発表を中心に、アパレルの発注者が押さえておきたい変化を整理します。
まず、衣服へのプリントと生地へのプリントを分ける
DTFは、専用フィルムに印刷した後、接着用のパウダーと熱処理を経て、衣服などに熱プレスで転写する方式です。プリンターから出力した時点で、加工がすべて終わるわけではありません。(エプソンのDTF解説・製品発表)
一方、衣服に直接印刷するDTGと、ロール状の生地に印刷するデジタル捺染では、印刷する対象や、その後の商品づくりの工程が異なります。今回取り上げるKornitのAtlas MATRIXは衣服の加飾向け、Presto MAX PLUSはロール状の生地向けのシステムです。機種の名前や印刷速度を比べる前に、完成した衣服へロゴを入れたいのか、柄を印刷した生地から製品をつくりたいのかを決めると、比較する設備と加工先が明確になります。(Atlas MATRIXの発表、Presto MAX PLUSの発表)
国内:DTFは色表現と日々の運用を改善
ミマキエンジニアリングは2026年9月8日、DTFプリンター「TxF330-800」を発表しました。基本4色(CMYK)と白の構成に加え、スカイブルーとペールピンクを追加する構成を用意。同社は、青から緑、ピンクから赤の領域や淡い色の表現を強化すると説明しています。(ミマキの公式発表)
ブランドカラーを使う発注では、「フルカラー対応」という説明から一歩進めて、実際のインク構成と印刷条件を確認したいところです。比較サンプルにはロゴのベタ部分、細い線、淡い色、グラデーションを入れ、採用する衣服の色で仕上がりを見ます。
運用面の参考になるのが、エプソンのDTF専用プリンター「SC-G6050」です。2025年発売の機種で、吸引キャップの自動清掃やホワイトインクの自動循環などを搭載しています。発売日は、当初の案内から後続発表で2025年5月20日に決定されました。(機能の公式説明、発売日の後続発表)
こうした機能は加工現場の運用を支えるものです。発注者は、印刷機の性能と合わせて、パウダー処理、熱プレス、検品まで含めた対応数量と納期を確認すると、完成品の生産計画を立てやすくなります。
海外:ポリエステルへの直接プリントで染料移行に対応
Kornit Digitalは2026年4月12日、「Atlas MATRIX」を発表しました。綿、ポリエステル、混紡への対応を掲げ、独自の「Karbon Shield」で濃く染めた生地や昇華染色したポリエステルの染料移行に対処すると説明しています。衣服への直接印刷に加え、フィルム転写にも対応する構成です。(Kornitの公式発表)
染料移行は、生地に含まれる染料がプリント部分へ移り、色を変えてしまう現象です。Brotherの技術解説も、ポリエステルの染料が印刷されたインクの色に影響する例を説明しています。(Brotherのポリエステル印刷解説)
スポーツウェアなどの企画では、メーカーが示す対応素材と、自社商品の指定生地を区別して確認します。白いロゴの色、加工直後と時間を置いた後の状態、洗濯後の見え方を試作で比較し、採用条件を決めておくと判断が具体的になります。
海外:生地のデジタル捺染は工程集約と用途拡張へ
Kornitが2026年4月20日に発表した「Presto MAX PLUS」は、ロール状の生地に顔料で印刷するシステムです。同社は前後の洗浄を不要とする方式を説明し、耐摩耗性などを高める「DuraTech」を通じて、靴のアッパーや機能性衣料などへの用途拡張を掲げています。(Kornitの公式発表)
EFIも2026年5月19日の公式発表で、顔料による生地への直接印刷向け「Reggiani ecoNEXT Plus」を紹介しました。伸縮しない織物向けに最適化され、インク供給、定着、生産データの分析をまとめる構成とされています。(EFIの公式発表・PDF)
ここでの比較点は、柄を印刷する速さだけでなく、定着や仕上げを含めてどこまで工程がまとまるかです。生地の伸縮性や用途の違いもあるため、洗浄工程の省略、風合い、耐久性をすべての素材に一般化せず、指定生地と加工条件に沿って評価する必要があります。
発注時は、技術名を試作条件に置き換える
新しい技術を商品企画に結び付けるには、加工先へ次の条件を伝えて比較サンプルを依頼すると、検討が進めやすくなります。
- 素材と形状:生地の混率、色、厚み、伸縮性、印刷位置。衣服への加工か、生地段階の印刷かも明示する。
- 見た目と風合い:基準にする色見本、線の細さ、印刷面積、手触りや伸ばしたときの状態を確認する。
- 使用後の状態:想定する洗濯や摩擦の条件を共有し、どの試験で、何を合格とするかを決める。
- 数量と追加生産:試作・初回・追加発注それぞれの数量、単価、納期と、同じ仕上がりを再現する条件を確認する。
デジタル設備の導入だけで、加工先の最低ロットや完成品単価が決まるわけではありません。色、素材、工程の進化を手掛かりに、自社の商品で成立する条件を試作で確かめ、その条件を量産の承認サンプルと仕様に残すことが大切です。
出典・参考資料
- ミマキエンジニアリング:TxF330-800の発表(2026年9月8日)
- エプソン販売:SC-G6050の製品発表(2025年1月22日)
- エプソン販売:SC-G6050の発売日決定(2025年4月17日)
- Kornit Digital:Atlas MATRIXの発表(2026年4月12日)
- Kornit Digital:Presto MAX PLUSの発表(2026年4月20日)
- EFI:FESPA 2026に向けた製品・技術発表(2026年5月19日、PDF)
- Brother USA:ポリエステルへの印刷に関する技術解説(公開日記載なし。染料移行の基礎説明として参照)
※2026年10月11日までに確認した公開情報をもとに編集。各製品の性能説明はメーカー発表に基づきます。日本国内での導入状況・加工受託先・個別商品の試験結果は本稿の調査範囲に含みません。