防寒インナーにエアロゲル――暖かさのつくり方が増えている

防寒インナーを企画するとき、厚みを増やす、裏側を起毛させる、といった方向から考えることがあります。しかし、服の中にさらに着込むなら、重ねたときの収まりや動きやすさも気になります。

暖かい服を考えるには、厚さとともに、熱をどう逃がさず、どう蓄えるかを見る必要があります。 その発想を考える具体例が、エアロゲルを使った冬用インナーです。

本稿では、2026年9月に公表された商品を、秋冬の素材企画という視点から取り上げます。

エアロゲルを糸に使う、冬用インナーの発表

おたふく手袋は2026年9月24日、「サーモエボ ゲル」シリーズを案内しました。メーカーの説明では、エアロゲルを糸状に加工して使い、蓄熱粉末素材を練り込んだ糸も採用。断熱と蓄熱を組み合わせた冬用インナーとして、シャツやタイツを紹介しています。メーカー公式発表

ここで注目したいのは、素材の名前の珍しさより、異なる働きを組み合わせて衣料を設計している点です。厚みという見える特徴だけでは、暖かさをつくる仕組みを説明しきれなくなっています。

「熱を逃がしにくくする」と「熱を蓄える」

断熱は、熱が移動するのを抑える働きです。断熱材として使われるエアロゲルは、熱を伝えにくい性質が注目されている材料です。材料そのものが、熱源になるという意味ではありません。

一方、蓄熱は熱を蓄える働きを指します。「断熱」と「蓄熱」は、同じ暖かさという言葉で紹介されても、着目している働きが異なります。

今回のメーカー発表は、この二つを組み合わせた商品を紹介しています。ただし、その案内だけで個々の働きの大きさや、他製品との暖かさの差までは判断できません。エアロゲル一般の断熱特性と、今回の糸や完成品の性能も分けて読む必要があります。

それでも、商品企画にとっての発見はあります。「もっと暖かくしたい」という要望を、厚みの変更だけで考えず、熱の扱い方という別の方向から検討できることです。

同じ「暖かい」でも、着る場面で欲しい服は変わる

たとえば、屋外で立ち止まる時間が長い人と、身体を動かす作業が多い人。あるいは、暖房のある室内と寒い屋外を行き来する人。同じ冬用インナーでも、欲しい着用感は重なり切りません。

身体を動かすなら、暖かさと一緒に、汗をかいた後の状態や動きやすさが気になります。上にシャツや作業着を重ねるなら、腕まわりの収まりや生地同士の重なりも、服としての使いやすさに関わります。

これは、今回の商品がそれらすべてに対応すると示す話ではありません。素材の働きを知ったうえで、何を重視する商品にするかを考える、企画側の課題です。暖かさをどの場面で役立てたいかまで描くと、比較したい内容も具体的になります。

新素材の価値は、作りたい服を増やすことにある

断熱素材を衣料に使う商品化事例は、防寒設計の選択肢を考えるきっかけになります。新しい素材名を仕様書に加えることだけが、その価値ではありません。

たとえば、重ね着したときの収まりを大切にしながら防寒性を考えたい。あるいは、活動中と休憩中の違いまで見てインナーを企画したい。まず作りたい服の姿を置き、そのために素材のどの働きを使うかを考えます。

実際に採用を検討する段階では、候補となる生地や完成品の評価資料、取扱い後の状態、供給形態を確かめる必要があります。今回の発表は市販商品の案内であり、同じ糸や生地をOEM向けに調達できることを示す資料ではありません。

防寒インナーにエアロゲルが使われるというニュースから持ち帰りたいのは、暖かさの設計を厚さだけで考えないという視点です。熱の逃げ方、蓄え方、そして着る人の一日の動きをつなげることで、素材の技術を商品企画の言葉に変えられます。

用途から素材・縫製の組み合わせを考える際は、合繊機能素材とアパレルOEMの解説もご参照ください。

出典・参考資料

メーカーの公表情報をもとにスタイルワークス編集部が編集。用途への展開は編集上の提案です。当社での取扱い・採用実績、個別の性能比較、現在の入荷状況は本稿では確認していません。

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